貸倒引当金とはなんでしょうか?
正直、簿記以外でこの言葉を聞く機会はほぼないのではと思います
しかし簿記試験においては頻出の論点となりますのでしっかり理解しておきましょう
貸倒引当金とは?
貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、貸倒損失になるかもしれない金額を予想して、あらかじめ計上した引当金です
回収の見込みがなくなった売上債権は貸倒損失(費用)として資産から費用に振り替えられます
A社に対する売掛金1万円が、A社倒産のため回収不能となった
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒損失 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
もし貸倒引当金を計上していた場合、貸倒引当金を使用して貸倒れとなった売上債権と相殺します
前期の取引におけるA社に対しての売掛金1万円が、A社倒産のため回収不能となった
なお貸倒引当金3万円を計上していた
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
売掛金や受取手形など後日回収できるはずだった代金を回収できなくなることを貸倒れと言います
貸倒引当金を計上する理由
貸倒れが発生するたびに費用計上していると利益への影響も大きくなる可能性があります
また、売掛金や受取手形といった売上債権は過去のデータからだいたい何%が貸倒れになってしまうかを計算することが可能です
それなら売上債権の金額に応じてあらかじめ損失となりうる金額を費用化して資産額から差し引いておこうという考え方が貸倒引当金となります
貸倒引当金の計上
貸倒引当金は決算整理仕訳で計上します
計上の仕方には差額補充法と洗替法があります
差額補充法
差額補充法とは、すでに計上されている貸倒引当金との差額を新たに貸倒引当金として計上する方法です
貸倒引当金繰入
貸倒引当金を計上する場合は貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)【費用】の勘定科目を使用します
売掛金100万円の3%にあたる金額を貸倒引当金として計上する
なお期末時点での貸倒引当金残高は1万円である
借方 | 貸方 | ||
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貸倒引当金繰入 | 20,000 | 貸倒引当金 | 20,000 |
期末時点で1万円の貸倒引当金が残っているので当期末で計上する額は差額の2万円です
貸倒引当金戻入
貸倒引当金残高が当期末で計上する金額を上回っている場合は貸倒引当金戻入(かしだおれひきあてきんもどしいれ)【収益】を使用して貸倒引当金残高を減らします
売掛金100万円の3%にあたる金額を貸倒引当金として計上する
なお期末時点での貸倒引当金残高は4万円である
借方 | 貸方 | ||
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貸倒引当金 | 10,000 | 貸倒引当金戻入 | 10,000 |
期末時点で4万円の貸倒引当金が残っているので当期末で減らす金額は差額の1万円です
洗替法
洗替法とは前期に計上した貸倒引当金をいったん取り崩してから、改めて当期の貸倒引当金を計上する方法です
売掛金100万円の3%にあたる金額を貸倒引当金として計上する
なお期末時点での貸倒引当金残高は1万円である
借方 | 貸方 | ||
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貸倒引当金 | 10,000 | 貸倒引当金戻入 | 10,000 |
貸倒引当金繰入 | 30,000 | 貸倒引当金 | 30,000 |
当期の貸倒引当金を計上には貸倒引当金繰入(費用)を使用します
貸倒引当金と貸倒損失
ここで確認しておいていただきたいことは貸倒引当金は計上するタイミング以前の売上債権に対するものであるという事です
したがって貸倒引当金を計上してから発生した売上債権が貸倒れとなった場合は貸倒損失(費用)を計上します
前期の取引におけるA社に対しての売掛金1万円が、A社倒産のため回収不能となった
なお貸倒引当金3万円を計上していた
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
前期の決算整理仕訳において貸倒引当金が計上されているということなのでこの場合は貸倒引当金を使用します
当期の取引におけるA社に対しての売掛金1万円が、A社倒産のため回収不能となった
なお貸倒引当金3万円を計上していた
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒損失 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
つまり当期の売上債権について貸倒引当金はまだ計上されていません
したがってこの場合は貸倒損失(費用)を使用します
貸倒れに関する仕訳の際は、いつの売上債権が貸倒れになったのかに注意しましょう
貸倒損失の回収
一度貸倒れとなった債権を後日回収できる場合があります
ただし貸倒損失が前期以前のものなのか当期のものなのかによって仕訳が異なります
それぞれの場合について仕訳例を見ていきましょう
当期の貸倒損失を回収した場合
当期の貸倒損失を回収した場合は、一度計上した貸倒損失(費用)を取り消す仕分けをおこないます
当期に計上した貸倒損失のうち1,000円を現金で回収した
借方 | 貸方 | ||
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現金 | 1,000 | 貸倒損失 | 1,000 |
前期以前の貸倒損失を回収した場合
前期以前の貸倒損失を回収した場合は、償却債権取立益(収益)を使用して仕訳します
費用は期ごとに管理しているため、前期以前の費用を取り消すことはできないからです
前期に計上した貸倒損失のうち1,000円を現金で回収した
借方 | 貸方 | ||
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現金 | 1,000 | 償却債権取立益 | 1,000 |
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